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フィンランドのTech人材と国際企業をつなぐ世界最大級のスタートアップの祭典 ― 『SLUSH』

2018-05-02

Founding Story

2008年、起業家同士をつなぐイベントとして発足。2011年に、学際的なアールト大学の学生に運営がバトンタッチされるタイミングで、英語を公用語にし、ヘルシンキと世界とをつなぐ使命を背負う、グローバル志向のカンファレンスへと変わったという。

Fact

130ヶ国・地域から2万人

初回参加人数はフィンランド人300人ほどだったものの、開始10年目の2017年は130ヶ国・地域から約2万人が来場する、世界最大級のスタートアップ・カンファレンスに。

5都市で開催

2015年から東京と北京、2016年からシンガポールと上海も加わり、ヘルシンキを含めて計5都市で開催中だ。

Strategy

海外戦略

アジアの成長都市での展開を進めるなかで、特筆すべきは、イベントが出張するのとは一線を画す形で、法人を海外に設けたことだろう。結果的に、イベントを仕掛けたい多様なニーズを汲み取ることに奏功し、2017年には主要イベントに加えて、アジアで70以上の小さなイベントをアレンジしてきた。例えば、2018年春、アップルなどグローバル企業の研究施設を誘致し、医療・健康分野でのイノベーション創造を目指す横浜市と小規模なSLUSHを共催したり、東京では48時間耐久の日本最大級のハッカソンイベントを開催したりしてきた。

Courtesy of SLUSH

著名起業家・投資家の招聘

起業家をポップスターに仕立てるような舞台演出を整えたうえで、SportifyのCEOのダニエル・エク氏(Daniel Ek)やSupercellのCEOイルッカ・パーナネン(Ilkka Paananen)といった著名起業家や、元・米副大統領でサステナブル分野の投資家でもあるアル・ゴア氏等をスピーカーとして招き、彼らの口コミやイベントのレポートコンテンツで、世界のスタートアップ関係者にイベントの魅力を伝えた。

Photo: Courtesy of SLUSH

Related Trend

過去最高のスタートアップ投資額を達成

2017年のフィンランドのスタートアップへの投資額は過去最高の349百万ユーロに達した。とりわけ、海外投資は年率33%増と非常に大きく伸長した。

VR・AR界の気鋭がヘルシンキに子会社設立

アルファベット、アリババ等から計20億ドル以上を調達し、VRとARを統合したMR(複合現実)ディスプレイ端末の開発を目指すMagic Leap。彼らは光学技術に長けた人材の多いフィンランドで、シリコンバレーとは一線を画す開発を目指す。

Huaweiがフィンランド・タンペレ工科大学内にR&D拠点設置

Huaweiは2012年時点、フィンランドにR&D拠点を設け、モバイルソフトウェアの戦略的な研究開発をするために2018年までに7,000万ユーロを投資すると発表していた。そして、2016年に、大学内に拠点を設置し、消費者向け製品に利用するカメラ、オーディオ、そして画像処理技術の研究開発を開始。

area vision MEMO

経済効果300億円の『SXSW』はおおよそ30年かけて今の規模に至った。一方、ヘルシンキは、10年以内にスタートアップシティとして名乗りを上げ、海外からの投資を呼び込み、ヘルシンキという都市を活性化してきた。そのけん引役に『SLUSH』がある。イベントが“シティ・セールスマン”となって、その地域の資源や潜在力を語り、世界の注目を惹きつけている好例だ。