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『Helsinki Design Week』 ― 先駆的なプログラムを追求し、海外におけるフィンランド・デザインの価値を引き上げる

2018-05-10

Founding Story

『ヘルシンキ・デザインウィーク』は、デザインやマーケティングなどを提供する地元のクリエイティブ集団によって、ヘルシンキ市のクリエイティブ産業を発展させることを目標に2005年に開始。ファッション、建築、都市等のテーマを扱い、専門家も市民も観光客も楽しめる約10日間となっている。世界50都市以上が参加する、デザインウィークのネットワークにも所属。

Fact

250イベント

ヘルシンキ・デザインウィーク期間中、専門家向け、市民向けの約250のイベントが開催される。市内にある約10の大使館を限定公開し、デザイン対談を聴講する「Design Diplomacy」や、建築・宇宙・インテリアデザインを学べる子ども向けのワークショップが豊富な「Children’s Weekend」が、人気イベントの1つ。

16万人来場

北欧諸国で最大規模のデザインフェスティバルとなった今、約10日間の開催中に、世界から約16万人(2016年は158,000人)が来場する。

Courtesy of Helsinki Design Week

Strategy

「グローバル化」を目指し、デザイン都市としてのリーダーシップを発揮

「Design Diplomacy」が代表例のように、グローバル化を基本戦略に据えている。2017年には、アフリカのデザインカンファレンス「Design Indaba」と共同し、世界中の都市の社会課題に照準を合わせたイベント「Design Commons」を実施。同イベントでは、デザイナーや建築のみならず、社会活動家を招き入れて、デザインによって都市課題を解決できるアプローチをその場で議論し、新しい可能性を探った。『ヘルシンキ・デザインウィーク』は、従来のデザインフェスティバルとは異なる取り組みに挑み、エリア内外のクリエイティブワーカーにデザイン都市としての強いリーダーシップを発揮している。

同時期のイベントを統合、そしてコンセプトを隣国提供

2012年まで「Children’s Weekend」は同時期にありながら、別趣旨での開催だったが、2013年からデザインウィーク傘下に。そして、デザイナーやデザイン戦略に長けた企業・製品を表彰する「Muoto Gala」も2016年からデザインウィークでの実施となった。また、アイスランド・レイキャビックのデザインフェスティバル「Design March」に、2017年から「Design Diplomacy」が導入されることになり、大使館という使い勝手が一見悪そうな都市のリソースを上手に活用するムーブメントを押し広げている。

Courtesy of Helsinki Design Week

Photo: Courtesy of Helsinki Design Week

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ヘルシンキを代表するmarimekkoの世界的な成長

フィンランド・デザインを代表するヘルシンキ発の「marimekko」は、独自の世界観でファンを増やしている。ここ8年ずっと右肩上がりに売り上げを伸ばし、2017年、純売上高は1億ユーロに。アジア市場は伸長しているものの、フィンランド国内市場が圧倒的に大きく、今後の成長余地はまだ大きいと思われる。その包容力ある世界観に惹かれるブランドも多く、近年ではクリニークやユニクロといったグローバルブランドとコラボし、フィンランド・デザインを世界中の生活に浸透させつつある。

アジアとの太いネットワーク

中国・深センとの姉妹都市協定を経て、スマートデバイス・スタートアップやデザイン事務所が入居するインキュベーション施設「Sino-Finnish Design Park」を深センに設立。また、アールト大学と同済大学は上海に共同でデザイン系の大学院(Shanghai International College of Design and Innovation)を設立した。加えて、2018年夏に開業する美術館「Amos Rex」のオープニング展は、アジアを中心に人気を博す、日本発のクリエイター集団・チームラボに決定した。

area vision MEMO

『ヘルシンキ・デザインウィーク』は、市民を巻き込んでデザイン談義を重ねたり、子どもにも分かりやすくデザインを触れさせたりと、都市内の“デザイン民度”を高める役割を担っている。同時に、他都市のデザインウィークやデザインフェスティバルにない斬新な取り組みを仕掛け、「デザイン都市=ヘルシンキ」を海外に発揮する機会として活用している。
デザインのようなソフト価値の本質は目に見えない思想やビジョンにあるからこそ、リーダーシップを内外に発揮して、新しいイベント形式を形にすることが重要と認識させてくれる。